受益者がいない信託??文化的価値が高い財物を維持管理するための信託。

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受益者がいない信託??文化的価値が高い財物を維持管理するための信託。

司法書士うみのブログ

2019/11/05 受益者がいない信託??文化的価値が高い財物を維持管理するための信託。

 

こんにちは。

司法書士海埜です。

最近のご相談で、非常に珍しいケースがありました。

歴史的・文化的に価値が高い財産が存在するため、これを今後、一族をあげて維持・管理していくための家族信託が組成できるか、というお問合せです。

 

こういった場合、信託の永続性が求められるため、信託を受けるための法人を設立したほうがいいと思います。

法人の社員や役員に複数の親族が入ることによって、個人で受託するよりも親族全体が主体性を持てるといったメリットもあります。

そしてもっともポピュラーな方法で信託組成を行うとすれば、「委託者兼受益者=物品の所有者、受託者=新設法人」という形になるでしょう。

 

受益者の定めがない信託

 

しかしここで考えなければならないのは、受益者連続によって発生する相続税(あるいは贈与税)のことです。

委託者兼受益者が亡くなる度に、基本的には税金が発生する取り扱いになります。本件のような公益性が高い信託であっても、同じく税金がかかります。

そのあたり、どうにかならないかと信託法をくまなく読んでいくと…信託法258条に、実は「受益者を定めない信託」という類型があるのです。

なんと受益者がいなくても信託は組成できるのです。

これを「目的信託」と呼びます。

受益者がいないならば、移転する受益権もないですから、相続税や贈与税の問題は回避できそうな感じがします。

「信託法258条 受益者の定めのない信託は、第三条第一号(=信託契約)又は第二号(遺言による信託)に掲げる方法によってすることができる。」

 

この258条を規律する信託法附則3項では、「受益者の定めのない信託(学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益を目的とするものを除く)は、…信託事務を適正に処理するに足りる財産的基礎及び人的構成を有する者として政令で定める法人以外の者を受託者としてすることができない」として受託者資格を制限していますが、カッコ書きで「その他公益を目的とするもの」が除かれていますので、今回のような文化財保護を目的とするケースは除外される、と解することができます。

 

公益信託に関する法律

 

ところが受益者の定めがない信託には、これとは別の制限が存在します。

それは公益信託に関する法律第2条です。

「公益信託ニ関スル法律

第二条 信託法第二百五十八条第一項ニ規定スル受益者ノ定ナキ信託ノ内学術、技芸、慈善、祭祀、宗教其ノ他公益ヲ目的トスルモノニ付テハ受託者ニ於テ主務官庁ノ許可ヲ受クルニ非ザレバ其ノ効力ヲ生ゼズ」

つまり、受益者の定めがない信託のうち、一定の公益目的の信託については、主務官庁の許可が必要だということなのです。

この「主務官庁の許可」を取るために、具体的にどう動けばよいのか、どこが窓口で、どのような書類が必要で、最終的に誰の承認印が要求されるのかなどについては、個別のケースごとに調べなければわかりません。

また相当の時間と労力を要することが想像され、なおかつ、どのレベルの法人に対して許可が降りるのかも予測できないのが現状です。

 

 

 

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