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身内の使用貸借で住んでいる場合の相続トラブル。
こんにちは。
司法書士海埜です。
借りるという行為には、「賃貸借」と「使用貸借」というものがあります。おおざっぱに言うと「お金を払って借りる」か「タダで借りる」かの違いです。
親族間では、気軽な乗りで「うちの土地を使っていいよ」など許可を与えたり、あるいは代々の慣習で、土地をタダで使っていることがありますよね。
親族の土地に、タダで住んでいるという方は多いものです。
使用貸借の場合で、相続によって親族関係が変化すると、思わぬトラブルになることがあります。例えば次のような事例です。
【概要】 □父87歳(他界し相続発生)、母84歳、長男60歳、長女Aさん(相談者)58歳 □母は施設に入所中。 □遺言により不動産は兄がすべて相続、母の面倒を見ることとしてある。 □兄は結婚し、奥様と子(35歳)と一緒に、相続した実家に住んでいる。 □Aさんが結婚した後、30年前にその夫が父の土地の一部を借りて自宅を建築。 ※土地賃貸について契約書は交わしておらず、地代も発生していない(使用貸借)。
遺言により父の不動産は全て兄が相続することについて、Aさんは昔からそのように言われてきたので、その点に不満はありません。また、兄妹関係も良好。
しかし兄から、このように言われたのです。
兄「お前が住んでいる家の土地はタダで借りているんだよな。悪いけど、俺の子供の家を建てたいから、明け渡してほしい。俺が相続した土地だし、今までタダで借りていたんだから、仕方ないよな。」
Aさんとしては「急にそんなこと言われても…。建物もまだまだ使える状態なんだし。そもそも、私達がお父さんの土地に住むことはお父さんが決めた事だし…。」と困ってしまいました。
さて、Aさんは建物を明け渡さないといけないのでしょうか。使用貸借の場合、次のことに留意する必要があります。
お兄さんが父の土地を相続した場合、Aさんの夫(借主)の使用貸借する権利は消えずに継続します。 Aさん達が、借りたときの目的(家に住み続ける等)のまま使用し続ける限り、お兄さんはそのまま土地を貸し続けなければなりません。 そのため、Aさんの夫はお兄さんから立退きの要求があったとしても、使用貸借を主張して、そのまま住み続けることが出来ます。
借主(Aさんの夫)が亡くなり、Aさんが建物(土地は使用貸借)を相続した場合はどうでしょうか。 このことは民法599条に定めがあります。「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う」。つまりAさんは建物を取り壊し、土地をお兄さんに返還しなければならないことになります。
しかし同様の事件で、例外的に「明け渡さなくてもよい」とした判例があるのです。
東京地判平成5年9月14日等で、【家を建てて住む目的など、借主の状況を考慮すべき事由がある場合には、使用貸借の地位は引き継がれるべき】などと判示されています。
この判旨はあくまで例外として認めているものですが、借主の権利はある程度守られる傾向にあるようです。ただ、このように例外的に使用貸借の継続が認められたとしても、それが相続後20年なのか、30年なのか、あるいは半永久なのかは事案によります。
親の土地に子供が建物を建てるケースなどは、一般的に口約束のみで行われていることがほとんどです。 その際は親子だからと油断せず、きちんと契約書を作ったり、家族や親族などの関係者に周知しておくことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができるのではないでしょうか。
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24/05/16
24/04/25
24/04/07
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こんにちは。
司法書士海埜です。
借りるという行為には、「賃貸借」と「使用貸借」というものがあります。おおざっぱに言うと「お金を払って借りる」か「タダで借りる」かの違いです。
親族間では、気軽な乗りで「うちの土地を使っていいよ」など許可を与えたり、あるいは代々の慣習で、土地をタダで使っていることがありますよね。
親族の土地に、タダで住んでいるという方は多いものです。
相続が使用貸借に与える影響
使用貸借の場合で、相続によって親族関係が変化すると、思わぬトラブルになることがあります。例えば次のような事例です。
【概要】
□父87歳(他界し相続発生)、母84歳、長男60歳、長女Aさん(相談者)58歳
□母は施設に入所中。
□遺言により不動産は兄がすべて相続、母の面倒を見ることとしてある。
□兄は結婚し、奥様と子(35歳)と一緒に、相続した実家に住んでいる。
□Aさんが結婚した後、30年前にその夫が父の土地の一部を借りて自宅を建築。
※土地賃貸について契約書は交わしておらず、地代も発生していない(使用貸借)。
遺言により父の不動産は全て兄が相続することについて、Aさんは昔からそのように言われてきたので、その点に不満はありません。また、兄妹関係も良好。
しかし兄から、このように言われたのです。
兄「お前が住んでいる家の土地はタダで借りているんだよな。悪いけど、俺の子供の家を建てたいから、明け渡してほしい。俺が相続した土地だし、今までタダで借りていたんだから、仕方ないよな。」
Aさんとしては「急にそんなこと言われても…。建物もまだまだ使える状態なんだし。そもそも、私達がお父さんの土地に住むことはお父さんが決めた事だし…。」と困ってしまいました。
Aさんは、兄に土地を明渡さなければならないか。
さて、Aさんは建物を明け渡さないといけないのでしょうか。使用貸借の場合、次のことに留意する必要があります。
1)土地の貸主(父)に相続があった場合
お兄さんが父の土地を相続した場合、Aさんの夫(借主)の使用貸借する権利は消えずに継続します。
Aさん達が、借りたときの目的(家に住み続ける等)のまま使用し続ける限り、お兄さんはそのまま土地を貸し続けなければなりません。
そのため、Aさんの夫はお兄さんから立退きの要求があったとしても、使用貸借を主張して、そのまま住み続けることが出来ます。
2)借主(長女の夫)に相続があった場合
借主(Aさんの夫)が亡くなり、Aさんが建物(土地は使用貸借)を相続した場合はどうでしょうか。
このことは民法599条に定めがあります。「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う」。つまりAさんは建物を取り壊し、土地をお兄さんに返還しなければならないことになります。
しかし同様の事件で、例外的に「明け渡さなくてもよい」とした判例があるのです。
東京地判平成5年9月14日等で、【家を建てて住む目的など、借主の状況を考慮すべき事由がある場合には、使用貸借の地位は引き継がれるべき】などと判示されています。
この判旨はあくまで例外として認めているものですが、借主の権利はある程度守られる傾向にあるようです。ただ、このように例外的に使用貸借の継続が認められたとしても、それが相続後20年なのか、30年なのか、あるいは半永久なのかは事案によります。
親族でも権利関係を明確に。
親の土地に子供が建物を建てるケースなどは、一般的に口約束のみで行われていることがほとんどです。
その際は親子だからと油断せず、きちんと契約書を作ったり、家族や親族などの関係者に周知しておくことで、将来のトラブルを未然に防ぐことができるのではないでしょうか。
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