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受託者の債権者が、信託財産を差し押さえることがあり得るか。
こんにちは。
司法書士海埜です。
家族信託をはじめ、「信託」という契約に共通する機能として「倒産隔離機能」と呼ばれる働きがありますね。倒産隔離というのは、簡単に言えば、委託者や受託者が差し押さえを受ける事態になっても、信託財産だけは差し押さえを逃れて守られるといった意味合いです。今日はこの倒産隔離について考えてみます。
信託とは無関係に、受託者が債務を負担している場合には、受託者の固有財産のみが責任財産となり、受託者の債権者は、信託財産に属する財産について差押えをすることができません(「固有財産」とは受託者がもともと持っている、信託とは関係ない財産を指します)。
もしも、誤って信託財産に属する財産について差押えがされた場合には、受託者又は受益者は、異議を主張することができることになっています。 また、受託者が信託と無関係に負担している債務と信託財産に属する債権を相殺することはできませんし、もし受託者が破産をしても、信託財産に属する財産は、破産財団には属しません(信託法第22条、第23条、第25条)。
少し難しい言い方になりましたが、要は、受託者固有の債務については、信託財産は引き当てにならないということですね。また、委託者側が、信託とは無関係に債務を負っている場合も、信託とは無関係である以上、信託財産は責任財産とならないのが原則です。
このように信託財産は委託者・受託者の破産の影響を受けませんが、信託財産がまったく債務の引き当てにならないということではありません。これについては、信託法第21条1項に定めがあり、「信託財産責任負担債務」と呼ばれます。
信託法21条1項
一 受益債権(=受益者が受託者に対して、信託行為に基づいて信託利益の給付を受ける権利をいいます。
)
二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
四 第百三条第一項又は第二項の規定による受益権取得請求権(注:信託に重大な変更があるときは、受益者から受託者に対して、受益権を買い取るよう請求権を行使できます)
五 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利
七 第三十一条第六項に規定する処分その他の行為又は同条第七項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利
八 受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利
九 以上のほか、信託事務の処理について生じた権利
以上のとおり基本的には、信託契約、信託事務処理に関連した債権債務関係が対象になります。しかし第6項、第7項は若干読みにくい条文になっていますので、このあたりは次回の記事で詳しく書いてみます。
24/05/16
24/04/25
24/04/07
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こんにちは。
司法書士海埜です。
家族信託をはじめ、「信託」という契約に共通する機能として「倒産隔離機能」と呼ばれる働きがありますね。倒産隔離というのは、簡単に言えば、委託者や受託者が差し押さえを受ける事態になっても、信託財産だけは差し押さえを逃れて守られるといった意味合いです。今日はこの倒産隔離について考えてみます。
受託者の債権者がいる場合
信託とは無関係に、受託者が債務を負担している場合には、受託者の固有財産のみが責任財産となり、受託者の債権者は、信託財産に属する財産について差押えをすることができません(「固有財産」とは受託者がもともと持っている、信託とは関係ない財産を指します)。
もしも、誤って信託財産に属する財産について差押えがされた場合には、受託者又は受益者は、異議を主張することができることになっています。
また、受託者が信託と無関係に負担している債務と信託財産に属する債権を相殺することはできませんし、もし受託者が破産をしても、信託財産に属する財産は、破産財団には属しません(信託法第22条、第23条、第25条)。
少し難しい言い方になりましたが、要は、受託者固有の債務については、信託財産は引き当てにならないということですね。また、委託者側が、信託とは無関係に債務を負っている場合も、信託とは無関係である以上、信託財産は責任財産とならないのが原則です。
信託財産が引き当てになる場合とは?
このように信託財産は委託者・受託者の破産の影響を受けませんが、信託財産がまったく債務の引き当てにならないということではありません。これについては、信託法第21条1項に定めがあり、「信託財産責任負担債務」と呼ばれます。
信託法21条1項
一 受益債権(=受益者が受託者に対して、信託行為に基づいて信託利益の給付を受ける権利をいいます。
)
二 信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利
三 信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの
四 第百三条第一項又は第二項の規定による受益権取得請求権(注:信託に重大な変更があるときは、受益者から受託者に対して、受益権を買い取るよう請求権を行使できます)
五 信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利
七 第三十一条第六項に規定する処分その他の行為又は同条第七項に規定する行為のうち、これらの規定により取り消すことができない行為又はこれらの規定により取り消すことができる行為であって取り消されていないものによって生じた権利
八 受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利
九 以上のほか、信託事務の処理について生じた権利
以上のとおり基本的には、信託契約、信託事務処理に関連した債権債務関係が対象になります。しかし第6項、第7項は若干読みにくい条文になっていますので、このあたりは次回の記事で詳しく書いてみます。
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