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受託者が信託不動産からの家賃収入を得ることは許されるのか。
こんにちは。
司法書士海埜です。
信託財産である不動産を賃貸に出すと、賃料収入が入ってきますよね。この賃料収入は、信託財産となり、必要に応じて受益者に給付されるべきお金です。
それでは、このお金を、「受託者」のために使うことが許されるのでしょうか?
例えば事業を営んでいる受託者が、一時的に金策に苦慮していて、このお金の一部を使いたいなどの場合、受託者のものにできるのか?という疑問についてです。
信託は、受益者の利益を図るためにするものであるから、受託者が利益を享受することは許されません。受託者の役割はあくまでも、受益者の利益のために信託財産を管理することなのです。信託によって受託者が利益を得られるとしたら、それは信託契約に定めがある場合の受託者報酬しかあり得ないでしょう。
それでは、受託者が信託財産からお金を「借りる」というのはどうでしょうか?あとで返すのだから、結果的には信託財産を毀損することにはならないし、別に構わないと考えることもできそうですよね。 しかし、やはり受託者が信託金銭から借り入れるのは問題があるだろうと私は考えます。なぜなら、受託者は信託財産に関して善管注意義務を負っているところ、一時的にでも借り入れる行為は抽象的に信託財産を危険にさらし、受託者の義務を破っていることになるからです。要は、借りたものをきちんと返せるかどうか判らないということです。 またもし信託財産から借り入れることができるとしても、その場合、理論的には、法人である信託財産自体が金銭消費貸借契約の当事者となるのか、それとも、信託財産の管理者たる受託者Aから、個人としてのAに貸し付けたと構成すべきなのか、よくわからないことになってしまいます。
ただし、受託者が利益を得てもいい場合があります。それは受託者が受益者の地位も兼ねる場合です。少し疑問に感じる方も多いかもしれませんが、信託法第8条では、受託者と受益者が同一人物となることが認められていて、これを「自益信託」と呼ぶ人もいます。
このように受託者が受益者となることが一律に禁じられているわけではないことから、受益者としての立場にある限り、受託者は利益を享受することはできるのです。
なお、受託者が受益権の全てを保有する状態が一年間継続すると、信託の終了事由となりますので注意が必要です(信託法第163条第2号)。
24/05/16
24/04/25
24/04/07
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こんにちは。
司法書士海埜です。
信託財産である不動産を賃貸に出すと、賃料収入が入ってきますよね。この賃料収入は、信託財産となり、必要に応じて受益者に給付されるべきお金です。
それでは、このお金を、「受託者」のために使うことが許されるのでしょうか?
例えば事業を営んでいる受託者が、一時的に金策に苦慮していて、このお金の一部を使いたいなどの場合、受託者のものにできるのか?という疑問についてです。
受託者が利益を享受することは許されない。
信託は、受益者の利益を図るためにするものであるから、受託者が利益を享受することは許されません。受託者の役割はあくまでも、受益者の利益のために信託財産を管理することなのです。信託によって受託者が利益を得られるとしたら、それは信託契約に定めがある場合の受託者報酬しかあり得ないでしょう。
それでは、受託者が信託財産からお金を「借りる」というのはどうでしょうか?あとで返すのだから、結果的には信託財産を毀損することにはならないし、別に構わないと考えることもできそうですよね。
しかし、やはり受託者が信託金銭から借り入れるのは問題があるだろうと私は考えます。なぜなら、受託者は信託財産に関して善管注意義務を負っているところ、一時的にでも借り入れる行為は抽象的に信託財産を危険にさらし、受託者の義務を破っていることになるからです。要は、借りたものをきちんと返せるかどうか判らないということです。
またもし信託財産から借り入れることができるとしても、その場合、理論的には、法人である信託財産自体が金銭消費貸借契約の当事者となるのか、それとも、信託財産の管理者たる受託者Aから、個人としてのAに貸し付けたと構成すべきなのか、よくわからないことになってしまいます。
受託者が利益を得られる場合。
ただし、受託者が利益を得てもいい場合があります。それは受託者が受益者の地位も兼ねる場合です。少し疑問に感じる方も多いかもしれませんが、信託法第8条では、受託者と受益者が同一人物となることが認められていて、これを「自益信託」と呼ぶ人もいます。
このように受託者が受益者となることが一律に禁じられているわけではないことから、受益者としての立場にある限り、受託者は利益を享受することはできるのです。
なお、受託者が受益権の全てを保有する状態が一年間継続すると、信託の終了事由となりますので注意が必要です(信託法第163条第2号)。
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