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自己信託の悪用??『財産隠し』の懸念について
こんにちは。 司法書士海埜です。
前回、前々回と『自己信託』について利用例を挙げさせて頂きました。
家族信託。『自己信託』の事例。
自己信託の事例2『全財産を寄付したい』
今回はこの自己信託が悪用されるのではないか?という懸念についてです。
自己信託は、委託者=受託者という構造であるため、一人で完結してしまう法律行為ですよね。 このことから、「自己信託の悪用があり得るのではないか?」という懸念が新信託法施行当時から言われてきました。 「悪用」というのは具体的にはなにを指しているかというと、信託のいわゆる倒産隔離機能を利用して、いわば財産隠しができてしまうということです。 信託契約や、自己信託によって特定の財産が信託財産となったあとは、委託者あるいは受託者の固有財産が強制執行の対象となった場合でも、原則として信託財産は守られ、強制執行の対象とならないことになっていますよね。 例えば債務超過に陥った人の目線になれば、信託のこのような機能は、破産寸前に苦肉の策で財産を隠す手段にも見えてしまうのは、仕方がないのかもしれません。
㈱日本法令から出版されている『家族信託実務家ガイド』第8号には、こういった自己信託の悪用について、実際に強制執行を潜脱した例が現状あるのか否かを元検察官である公証人にインタビューした記事が掲載されています。 『検察庁の経験から財産隠しについていわせてもらえば、主たる昔からの方法は、名義を移すやり方なんですよ。追及されないように。そんな風に素朴にやっている人のほうが多いです。もちろん、「進化」して信託で名義を完全に移転さない方法でやる人もいるかもしれないけど、一部の悪用する人がいるからといって、全部を制限するのは違うんじゃないかなと思うんです。どんな制度だって悪用しようと思ったらできるので、どうやったら、それを防ぐかを考えたほうがいいですよ。』
自己信託は、公正証書等作成によって成立するため、ほぼ必ず公正証書を作る必要があります。その際、公証人との事前打合せは必須となります。 そこに関わる専門職として望ましい在り方としてはやはり、『なぜ自己信託を選択したのか』や『債務超過に陥っているわけではない』ということをある程度資料を揃えたうえで公証人に説明する作業を入れるというのが最低限要求されていると思います。もちろんその前提として、自己信託を希望するクライアントに正しく理解してもらうための努力が必要です。
長く信託実務を行っていると、どうしても、何度言葉を尽くしても、信託を理解できない(贈与・売買の枠組みから抜け出せないとか、財産隠しの目的が見え隠れするなど)クライアントもいらっしゃるのが現実で、そういった方には信託の組成をお断りするくらいのスタンスが必要なのかもしれません。
24/05/16
24/04/25
24/04/07
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こんにちは。
司法書士海埜です。
前回、前々回と『自己信託』について利用例を挙げさせて頂きました。
家族信託。『自己信託』の事例。
自己信託の事例2『全財産を寄付したい』
今回はこの自己信託が悪用されるのではないか?という懸念についてです。
【自己信託の悪用とは…】
自己信託は、委託者=受託者という構造であるため、一人で完結してしまう法律行為ですよね。
このことから、「自己信託の悪用があり得るのではないか?」という懸念が新信託法施行当時から言われてきました。
「悪用」というのは具体的にはなにを指しているかというと、信託のいわゆる倒産隔離機能を利用して、いわば財産隠しができてしまうということです。
信託契約や、自己信託によって特定の財産が信託財産となったあとは、委託者あるいは受託者の固有財産が強制執行の対象となった場合でも、原則として信託財産は守られ、強制執行の対象とならないことになっていますよね。
例えば債務超過に陥った人の目線になれば、信託のこのような機能は、破産寸前に苦肉の策で財産を隠す手段にも見えてしまうのは、仕方がないのかもしれません。
㈱日本法令から出版されている『家族信託実務家ガイド』第8号には、こういった自己信託の悪用について、実際に強制執行を潜脱した例が現状あるのか否かを元検察官である公証人にインタビューした記事が掲載されています。
『検察庁の経験から財産隠しについていわせてもらえば、主たる昔からの方法は、名義を移すやり方なんですよ。追及されないように。そんな風に素朴にやっている人のほうが多いです。もちろん、「進化」して信託で名義を完全に移転さない方法でやる人もいるかもしれないけど、一部の悪用する人がいるからといって、全部を制限するのは違うんじゃないかなと思うんです。どんな制度だって悪用しようと思ったらできるので、どうやったら、それを防ぐかを考えたほうがいいですよ。』
【実務家として望ましいあり方とは?】
自己信託は、公正証書等作成によって成立するため、ほぼ必ず公正証書を作る必要があります。その際、公証人との事前打合せは必須となります。
そこに関わる専門職として望ましい在り方としてはやはり、『なぜ自己信託を選択したのか』や『債務超過に陥っているわけではない』ということをある程度資料を揃えたうえで公証人に説明する作業を入れるというのが最低限要求されていると思います。もちろんその前提として、自己信託を希望するクライアントに正しく理解してもらうための努力が必要です。
長く信託実務を行っていると、どうしても、何度言葉を尽くしても、信託を理解できない(贈与・売買の枠組みから抜け出せないとか、財産隠しの目的が見え隠れするなど)クライアントもいらっしゃるのが現実で、そういった方には信託の組成をお断りするくらいのスタンスが必要なのかもしれません。
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