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農地の信託はできない?
こんにちは。
司法書士海埜です。
「農地は信託できないとどこかで聞いたような気がしますが、畑を信託財産に加えて問題ないでしょうか?」というご質問がありましたので、ちょっとまとめてみます。
農地は通常、農地法3条の農業委員会の許可がなければ移転できないことになっています。
この許可制度は、国内の農地を確保し、なおかつ、耕作能力ある者に農地を保有させることを趣旨としています。
ちなみにここで言う「農地」とは、登記上の地目が畑であるといった形式で判断するのではなく、現況が耕作のために供されているかどうかが基準となります。
このような制限があるからか、農地については家族信託が組成できないと考えている方が多い気がします。
しかし農地法には、農地を信託できることを前提にした条項があるのです。
それは、農地法第3条第1項第14号です。
農地法第3条
農地又は採草放牧地について所有権を移転…(途中省略)…する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可…(途中省略)…を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(一~十三省略)
十四 農業協同組合法第10条第3項の信託の引受けの事業又は農業経営基盤強化促進法第4条第2項第2号若しくは第2号の2に掲げる事業(以下これらを「信託事業」という。)を行う農業協同組合又は農地保有合理化法人が信託事業による信託の引受けにより所有権を取得する場合及び当該信託の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合
この条項によれば、「信託事業」による信託については、何らの許可なく信託財産とすることができます。
それでは、ふつうの家族信託が想定するような家族間での信託に関しても、この14号との関係はどうなるでしょうか。14号は、一定の農協などが受託者となる場合に適用が限定されるように読めます。
この点、農地法3条1項14号によって、家族信託含め農地信託全般、農業委員会の許可は不要であるという見解があります。
14号で農業委員会の許可が不要とされている理由が、「単に信託されただけでは耕作者が変わらないから、許可を条件とする必要がないから」だと考えれば、確かに14号を家族信託に類推することはできそうです。
この見解を採用するならば、農地であっても特段の許可なく信託することができ、信託登記もできるということになります。
いっぽうで14号の書きぶりは、一定の農協などに限っては耕作能力が担保されるのだから、許可を不要としている、とも読み取れますよね。この解釈でいくと、それ以外の信託については14号の適用がないという結論になりそうです。
「信託登記の理論と実務第三版」(藤原勇喜著)は、410ページで「農地法3条1項14号によって、(信託登記の添付書類としての)許可書はいらないと解されます」としています。詳しい記載はありませんが、おそらく前述のように14号を類推した考え方かと思います。
実際には、各地方自治体の農業委員会との打ち合わせによって粘り強く進めていくしかないだろうと思います。
24/05/16
24/04/25
24/04/07
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こんにちは。
司法書士海埜です。
「農地は信託できないとどこかで聞いたような気がしますが、畑を信託財産に加えて問題ないでしょうか?」というご質問がありましたので、ちょっとまとめてみます。
農地を移転する場合は…
農地は通常、農地法3条の農業委員会の許可がなければ移転できないことになっています。
この許可制度は、国内の農地を確保し、なおかつ、耕作能力ある者に農地を保有させることを趣旨としています。
ちなみにここで言う「農地」とは、登記上の地目が畑であるといった形式で判断するのではなく、現況が耕作のために供されているかどうかが基準となります。
農地を信託財産として受託者に移転することができるか。
このような制限があるからか、農地については家族信託が組成できないと考えている方が多い気がします。
しかし農地法には、農地を信託できることを前提にした条項があるのです。
それは、農地法第3条第1項第14号です。
農地法第3条
農地又は採草放牧地について所有権を移転…(途中省略)…する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可…(途中省略)…を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(一~十三省略)
十四 農業協同組合法第10条第3項の信託の引受けの事業又は農業経営基盤強化促進法第4条第2項第2号若しくは第2号の2に掲げる事業(以下これらを「信託事業」という。)を行う農業協同組合又は農地保有合理化法人が信託事業による信託の引受けにより所有権を取得する場合及び当該信託の終了によりその委託者又はその一般承継人が所有権を取得する場合
この条項によれば、「信託事業」による信託については、何らの許可なく信託財産とすることができます。
信託事業以外の信託も、農業委員会の許可は要らないのか。
それでは、ふつうの家族信託が想定するような家族間での信託に関しても、この14号との関係はどうなるでしょうか。14号は、一定の農協などが受託者となる場合に適用が限定されるように読めます。
この点、農地法3条1項14号によって、家族信託含め農地信託全般、農業委員会の許可は不要であるという見解があります。
14号で農業委員会の許可が不要とされている理由が、「単に信託されただけでは耕作者が変わらないから、許可を条件とする必要がないから」だと考えれば、確かに14号を家族信託に類推することはできそうです。
この見解を採用するならば、農地であっても特段の許可なく信託することができ、信託登記もできるということになります。
いっぽうで14号の書きぶりは、一定の農協などに限っては耕作能力が担保されるのだから、許可を不要としている、とも読み取れますよね。この解釈でいくと、それ以外の信託については14号の適用がないという結論になりそうです。
「信託登記の理論と実務第三版」(藤原勇喜著)は、410ページで「農地法3条1項14号によって、(信託登記の添付書類としての)許可書はいらないと解されます」としています。詳しい記載はありませんが、おそらく前述のように14号を類推した考え方かと思います。
実際には、各地方自治体の農業委員会との打ち合わせによって粘り強く進めていくしかないだろうと思います。
メール umino@umino-legal.jp
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