農地の信託登記。農業委員会の許可・届出

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農地の信託登記。農業委員会の許可・届出

司法書士うみのブログ

2019/01/19 農地の信託登記。農業委員会の許可・届出

こんにちは。
司法書士海埜です。

東京で営業しているとめったにお目にかからないのですが、不動産の中には「農地」という類型があります。
先日の信託登記で、たまたま地目を「田」とする土地があり、信託登記ができるのかどうか?というところで少し手間がかかりました。
この件は、先に地目を変更しようということになり、土地家屋調査士の先生を入れて案外すんなり信託登記を行うことができました。

 

 

農地と農業委員会

「農地」とは、農地法第2条によれば、「耕作の目的に供される土地」ということになります。
この定義からすると、登記上の地目が「田」「畑」になっているかどうかはまったく関係がなく、あくまで現況によって判断されることになります。

この判断は誰が行っているかというと、各市町村の「農業委員会」です。
農業委員会は、市町村の下部組織ではありません。行政からは独立した立場で活動しています(イメージとしては公正取引委員会に似ています)。
農業委員会によって「農地である」とされた土地は、農地台帳に掲載されます。
だから農地台帳に載っている土地=「農地」ということになります。

司法書士としては、地目やその他の状況から、対象物件が農地ではないか?と疑いをもった場合は、この農地台帳を確認するべきだと言われます。
(農地台帳の基本的な情報は、全国農地ナビというサイトで公開されているので、確認はそれほど大変な作業ではありません。)

そして農地を売買したり、農地を農業以外の用途で使用するためには、この農業委員会の許可や、届出が必要なのです。

 

信託登記と農業委員会

今回、農業委員会との打合せから入ったわけですが、「信託登記を行うために、前提として地目変更したい」と伝えたところ、特に疑問を呈されることもなく、「親族間の贈与」のような解釈をされたという感触があります。
しかし、登記地目が田であっても、実際にはアパートが建っているわけで、農業委員会でも現況が宅地であることは把握していたと思います。

 

今回は信託登記の前提として地目変更を行いましたが、もし「田」を「田」のまま(現況も田)信託登記を行うとしたらどうでしょうか。

この場合は農地法3条許可を農業委員会から得なければならないでしょう。この時、「信託」による移転について各農業委員会がどのように評価するかは、個別に打ち合わせてみなければわからないところがあります。

 

農地法と所有権移転時期

ところで司法書士試験の知識として我々は知っておかなければならないことですが、
農地法の許可・届出と、土地の売買があった場合の所有権移転時期との関係は次のようになります。

■許可の場合
…所有権移転時期は、許可書が申請者に届いた時。
■届出の場合
…所有権移転時期は届出申請が農業委員会に届いた時(=申請が受理された時)。

このあたりは、登記で使用する登記原因証明情報の原因日付にも影響してくるため、要注意です。

 

弊所では、家族信託の公正証書を作る場合は、原則としてその作成日を登記上の原因日付としていましたが、もし農地法の許可が必要なケースがあれば、許可が届いた日を原因日付としなければ整合しないということになりますね。

 

 

 

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