労働組合が受託者となって、組合員の財産を信託することができるか。

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労働組合が受託者となって、組合員の財産を信託することができるか。

2019/07/02 労働組合が受託者となって、組合員の財産を信託することができるか。

 

こんにちは。
司法書士海埜です。

労働組合が受託者となって、組合員の財産を信託することができるか、そのような仕組みを今後組合として導入していく可能性を模索しているといったご相談がありました。

 

組合の法人格

まず組合とひとくちに言っても、法人として登記がある組織と、登記がない組織があります。
登記がされていれば、法人格あるものとして法律行為の当事者となることができます。
登記がない場合は、単なる「人間の集まり」なので、原則として法的な主体となることはできません。
法人登記をしていなくても、いわゆる権利能力なき社団として法人格を認める前例はあるにはありますが、それは裁判での前例であって、登記なくして公証役場や法務局で普通に手続きが通るかと言えば、それは違うのですね。
だから組合が受託者となる場合は、まず法人登記をやっておきます。
(それが無理そうなときは、組合の代表者が個人で受託者になります)

 

「業として」の受託?

法人登記を経た組合が受託者となる場合、もうひとつ大きな論点があります。
民事信託の世界では、「業として」受託者の任務を行うことができません。
「業として」受託者となれるのは、行政の設ける基準をクリアして届出を行った者だけです。
つまり論点というのは、組合が各組合員から財産の信託を受けることが、この「業として」に該当するのではないか?ということなんですね。
そもそも「業として」という日本語がどのような意味合いかといえば、それは「不特定多数から」「報酬を得て」財産の信託を受けることと考えられています。
組合が組合員を対象に家族信託を導入する場合、委託者は必ず組合員に限定されますから、「不特定多数」ではありません。
従って「業として」には該当しないものと考えられます。

 

信託導入後の事務

もし組合と、組合員とのあいだで信託を導入するならば、受託者としての事務はかなり煩雑なものになりそうです。
信託された現金は、各組合員ごとに別々の銀行口座で管理しなければなりません。
また信託された不動産については登記だけでなく、火災保険、電気ガス水道の契約関係、固定資産税の精算はどのようにするかといった細かな問題が複合的についてきます。
さらに組合員が亡くなったとき、信託を継続していくのか、信託が終了するのか、信託が終了した場合信託財産を組合がもらい受けるのか、後で遺留分権者が現れたら組合としてどうするのかなど、色々な場面を想定しておく必要があります。
そういった面では組合が受託者となる信託の設計は、組合のキャパシティによって難しいのかなと思います。

 

 

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