「受託者=受益者」とする家族信託。

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「受託者=受益者」とする家族信託。

司法書士うみのブログ

2019/02/02 「受託者=受益者」とする家族信託。

こんにちは。

司法書士海埜です。

先日、ある家族信託コーディネーターの方が作成した信託契約書をチェックしたところ、第二受益者に受託者が含まれていました。

当初は

①委託者=父

②受託者=娘

③受益者=父

として組成されており、父死亡後は下記のようになるという想定なのです。

①委託者=母・娘

②受託者=娘

③受益者=母・娘

受託者と受益者を兼ねることができるのか?というご質問はよく頂くのですが、実はこのような信託も可能です。

信託設定後、速やかに受益者の変更が予定されている場合は、「委託者=受託者=受益者」という信託も可能とされています。
また、信託設定時においても、単独の受託者が複数の受益者の一人として信託を設定することはできますし、信託開始後に後発的な理由でたまたま、単独受託者が複数受益者の一人となることも問題ありません。

1年ルールの理由

ただし、受託者と受益者が同じ状態が1年間続くと信託は終了するという規定になっていますので、この点には注意が必要です。(信託法第163条2号『受託者が受益権の全部を固有財産で保有する状態が1年間継続したとき』に当該信託は終了するとされています。)

ところでこの、いわゆる「1年ルール」というものは、何故設けられているのかと言えば、やはり「受託者=受益者」という状況が、信託の本質から逸脱するからだと言われていますよね。

信託法第2条には、「信託」の定義として「特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。…)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすること」と定められており、

「その者」というのは受託者のことですから、受託者の便益のための信託はダメだということになります。

だから、本筋からいえば「受託者=受益者」という状態はあまりよろしくないんだけれども、例外的に認められる場合もあるよというのが、信託法の趣旨なのだろうと思います。

一部学説には「当初から、単独受託者が単独受益者である信託はできない」という考え方があるのも(通説とまでは言えない?)このような法の趣旨からです。受託者は信託財産を守るべき存在なのであって、たとえ外形的にでも信託財産を毀損するかのような誤解を受けるような信託設定は、違法ではなくても避けたほうが無難と、私も個人的には考えています。

 

 

「信託」は「相続」とは違う。

今回は、第二受益者に娘を入れる必要性はそれほどないにも関わらず、「本人の希望」ということで入っていました。おそらくは「相続」と「信託」を混同されているのだろうと想像します。

つまり、父が死亡し、単にそれを母と娘で相続することは何ら問題ないのに対して、信託のルールでは、受託者としての娘は自己の利益のために信託財産を毀損してはならないという法的な義務を負います。

この認識が、ご本人達にも、家族信託コーディネーターにもほとんどなかったということだろうと思います。

「家族の中の、内々のことだから…」でもいいのかもしれませんが、少なくとも受託者には正しい認識が必要です。

 

 

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