受益者に対し、委託者からお金を貸すことができるか?またその信託財産に抵当権を設定できるか?

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受益者に対し、委託者からお金を貸すことができるか?またその信託財産に抵当権を設定できるか?

2022/08/15 受益者に対し、委託者からお金を貸すことができるか?またその信託財産に抵当権を設定できるか?

 

 

こんにちは。

司法書士海埜です。

 

先日、家族信託を実施したから、タイトルの質問がありました。

「信託財産を売却して、受益者の施設の支払いに充てるつもりだったが、予想に反して売却に時間がかかりそう。

そこで、委託者から(信託とは関係ない)現金を受益者に貸与するつもりです。

あわせて、信託財産に抵当権を付けたいです。」

このような内容です。

 

(ちなみに売却に時間がかかっている大きな理由というのは、その不動産の地目が農地だからです。

農地については、各自治体の農業委員会をクリアしなければならないのですが、今回の信託はこれを条件にしたものでした。

つまり、農業委員会をクリアした時点で信託の効力が発生するという組み立てで、信託契約をしていました。)

 

さて、受託者から委託者に対し、信託とはまったく関係ないところでお金を貸すこと自体は、問題ないですよね。

あくまでも、意思能力ある大人同士が、金銭消費貸借契約を結ぶだけだからです。

 

それではこの債権の担保として、すでに信託財産となって信託登記されている不動産に、抵当権を設定することができるでしょうか?

この点については、信託法第31条1項4号に反し、できないと考えます。

 

信託法第31条第1項第4号

「受託者は、次に掲げる行為をしてはならない」

「信託財産に属する財産につき固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務に係る債権を被担保債権とする担保権を設定すること」

受益者が信託に関係なく自分で借り入れたお金については、「固有財産に属する財産のみをもって履行する責任を負う債務」に該当します。

したがって受益者が持っている、信託に関係ない財産をもって支弁するのがスジということになります。

 

 

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