海外にいる会ったこともない妹に、亡父の遺留分について伝える義務があるか?
こんにちは。
司法書士海埜です。
この記事は、実際にあったご相談をもとにしています。
Aさんは、父親が亡くなったので相続手続きのため戸籍調査を行った。
その結果、生まれてこの方、会ったことがない妹が存在しているということが、初めて明らかになり、Aさんはびっくり仰天する。
「そういえば、父には前婚があったと昔聞いたことがあった気がしますが、そのことについて父は一言も話さなかったんですよ。亡くなるまでただの一度もです。」
とAさんは言う。
このご家族の場合、亡くなった父上の家族信託と遺言書が矛盾なく同時に存在していて、これらの公正証書遺言の中でAさんがすべての財産を引きつぐことが決まっている。
「会ったことがない妹(仮にB)に父の死を知らせて、何らかの話し合いを持たなければならないのでしょうか?
そうしないと、Bの遺留分を僕が侵害したということになりますか。
僕からBにお知らせする義務が、法的にあるんでしょうか?
遠方にいるBの居場所を突き止めて、通知を出す?
対面するのも気が重いですし、できればBとは関わりたくないというのが本音です。」
これがAさんの心配です。
さて、Bさんに遺留分という権利があることはご存知かと思います。
Bさんは、自分に遺留分権があることを知れば、それを行使することができます。
それでは、このことをBさんに知らせてあげる法的な義務が、Aさんにあるのでしょうか。
答えはNOです。
そのような義務については民法のどこにも書いていません。
そして
「会ったことがない妹に父の死を知らせて、何らかの話し合いを持たなければならないのでしょうか?
そうしないと、Bの遺留分を僕が侵害したということになりますか。」
この点についても答えはNOですよね。
知らせる義務もなければ、話し合う義務もありません。
お父様の公正証書遺言と、家族信託公正証書の内容そのものが、Bの遺留分を侵害しているのであって
AさんがBさんに「知らせなかったから遺留分が侵害された」のではありません。
専門家的な模範解答としては、
「相続人全員に情報を行きわたらせて権利を保護するべきであって、そうすることで後日遺留分権を行使されるリスクは最小限なるはずだ」
というアドバイスも考えられるでしょう。
もちろん遺言書などがない場合は、共同相続人全員の遺産分割協議書を行わなければなりません。
しかし今回のケースでは遺言書と家族信託による指定があるため、被相続人死亡時から当然にその効果が発生しています。
個別の事情によるところが大きいですが、必ずしも連絡を取る必要はないと考えられます。
また遺留分権には時効があり、被相続人死亡から10年の経過によって消滅するということも頭に入れておくべきです。
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